デザインストーリー
春と秋、ひとつの手のひらで巡る季節
日本の四季は、少女の装いにいちばん美しく表れます。春はやわらかな桜色、秋は燃えるような紅。相反するようでいて、どちらも移ろいゆくものの美しさを教えてくれます。桜は散るからこそ愛おしく、紅葉は色づいて落ちるからこそ心に残る。日本人が古くから大切にしてきた「無常」の感覚が、この二つの季節にはよく表れています。今回のデザインは、そんな春と秋を一人ずつの少女に託し、ひとつの表裏で巡り合わせました。
表面:桜の少女、春のはじまり
表面に描いたのは、淡いピンクの着物をまとった春の少女です。満開の桜の下で、風に舞う花びらをそっと見上げる姿。頬にほんのり差した赤みや、髪を飾る小さな花のかんざしまで、やわらかな光で包み込みました。着物の袖には桜の刺繍を、帯には淡い若草色をあしらい、春の空気の透明感を意識しています。
桜は「はじまり」の象徴です。新しい季節、新しい出会い、新しい一歩。入学や就職、引っ越し——人生の節目にはいつも桜が咲いていた気がします。手のひらの中でその瞬間をいつでも思い出せたら、日々の景色が少しだけ優しくなる気がします。
裏面:紅葉の少女、秋の実り
裏面には、深い紅の着物をまとう秋の少女を配しました。色づいた紅葉のなかで、落ち葉を見送るような穏やかな微笑み。春の少女と同じ絵柄・同じ塗りで描きながら、配色だけを春のピンクから秋の紅へと切り替えています。金の差し色を加えることで、秋の夕暮れの豊かさも表現しました。
一台をくるりと裏返すだけで、春から秋へ。季節が手の中で移ろっていく感覚を、この両面デザインで表現しました。表と裏で時間が流れていく——そんな仕掛けを楽しんでいただけます。
対(つい)でデザインする愉しさ
二人の少女は、まるで姉妹のように似ていて、けれど確かに違います。同じ筆致で描くからこそ、桜と紅葉の対比がいっそう際立ちます。片面だけでは物足りない、両面そろって初めて完成する——そんな「対のデザイン」ならではの奥行きを楽しんでいただけます。片方を見てからもう片方を見ると、色の記憶が重なって、季節の移ろいが余韻として残ります。
手のひらサイズだからこそ映える
小さな金属の面に、これだけの情景を落とし込む。だからこそ細部の描き込みが効いてきます。着物の柄、髪の一筋、舞い散る花びらと落ち葉。近くで眺めるほどに発見がある——それが金属工芸としての面白さでもあります。光の角度を変えると、金属特有の艶が塗りの陰影に重なって、印刷物とは違う立体感が生まれます。
Zippoライターは、道具でありながら、手にした人の物語をそっと映す小さなキャンバスでもあります。季節を愛でる気持ちを、いつも身近に置いておきたい方へ。ふとポケットから取り出したときに、桜や紅葉の情景が目に入る——そんな日常の小さな豊かさを届けたいと思っています。
世界にひとつの一台として
このデザインは、贈りものにも、自分へのご褒美にもよく似合います。春生まれの方へ、秋生まれの方へ。あるいは、季節の移ろいそのものを愛する方へ。二人で分け合って、片方は桜、片方は紅葉、と持つのも素敵かもしれません。名入れや細部の調整も承れますので、あなただけの一台として仕立てることができます。
派手さではなく、静かに寄り添う美しさを。桜と紅葉の少女が、あなたの手のひらで季節を巡ります。移ろうものの美しさを、いつでも思い出せる一台として。
製作について、少しだけ
このデザインは、下絵から配色、細部の調整まで一つひとつ手をかけて仕上げています。特に春秋の対では、表と裏で「同じ人物に見える」ことが命です。輪郭のとり方、目もとの描き方、着物のシルエットを揃えることで、色だけが移り変わったように感じられる——その一点にこだわりました。仕上げの段階では、金属という素材の特性も考えます。紙と違い、光をどう反射するかで印象が大きく変わるため、明度のバランスを何度も見直しています。
また、桜と紅葉というモチーフは日本の定番だからこそ、ありふれて見えない工夫が要ります。花びらや落ち葉の散らし方、風の向き、光の差し込む角度。ほんの少しの調整で、絵全体の空気が変わります。定番を、定番のまま終わらせない。そんな気持ちで向き合った一台です。手にとってくださる方が、ふとした瞬間に季節の情景を思い浮かべてくださったら、それ以上の喜びはありません。











