デザインストーリー
面(おもて)の向こうに、もうひとりの自分
夕暮れの参道。朱に染まる鳥居の下で、白い狐の面を胸元に抱く巫女の少女。その静けさに、ふと問いかけたくなります。面の下には、どんな顔が隠れているのだろうと。
日本の民話では、狐は神使であり、時にあやかしでもありました。清らかさと妖しさ、その両方をひとりの少女に託したのが、この「白狐の巫女」です。表には人としての凛とした姿を、裏にはその面に宿る付喪神(つくもがみ=古い道具に魂が宿ったもの)の姿を描き分けています。
表と裏、対になる二面性
表面の少女は、まっすぐに前を見つめ、口元にわずかな微笑みをたたえています。白い haori(羽織)と朱の袴のコントラストは、そのまま神域の色。散る紅葉が時間の移ろいを添えます。
いっぽう裏面では、同じ少女に白い狐耳と大きな尾が生え、瞳は琥珀色に光り、瞳孔は縦に細くなっています。周囲に浮かぶ青い狐火だけが、人ならざるものの証。表が「静」なら、裏は「妖」。ひとつの器の両面に、二つの魂が宿っているかのようです。
手仕事が宿す、小さな神域
このデザインを一台のライターに落とし込むとき、大切にしているのは色の深みです。朱の発色、白の清らかさ、そして狐火の淡い青。金属の面に印刷された絵柄は、光の角度で表情を変え、まるで面をつけ外しするように見る人の心を揺らします。
オリジナルZIPPOライターとして仕立てるということは、量産品にはない「一台だけの神域」を手のひらに持つということ。カチリと開く小さな音は、まるで社(やしろ)の鈴のよう。火を灯すたび、あやかしがそっと目を覚ますような気がしてきます。
贈る、記す、傍に置く
和の神秘を愛する人へ。あるいは、二面性という言葉にどこか惹かれる自分自身へ。名入れを添えれば、それはもう世界にひとつの守り札のような存在になります。
祭りの夜に、静かな書斎の机上に、あるいは大切な節目の記念に。表の巫女と裏のあやかし、どちらの顔と過ごす一日にするかは、その日の気分しだい。持つ人の物語を、そっと引き受けてくれる一台です。
所有する喜びは、細部に宿ります。面の漆の艶、袴の襞(ひだ)の陰影、尾のふくらみ。眺めるほどに、少女とあやかしの間で視線が行き来し、飽きることがありません。手にした人だけが知る、静かな高揚がここにあります。











