デザインストーリー
薄暗い店の片隅、音楽に浸る時間
ジャズが低く流れる店の片隅。頬杖をついて、ぼんやりと音楽に耳を傾ける女性——そんな一瞬を切り取ったのが、今回のデザイン「ジャズが流れる店の片隅」です。
テーブルランプのわずかな灯りだけが手元を照らし、背景には積み重なったレコードジャケットと古いスピーカー。派手な色は使わず、ダークティールとバーガンディ、琥珀色を重ねた落ち着いた配色で、大人の夜の店内を表現しました。
音楽と灯りの表現
このデザインでこだわったのは「音の気配」です。彼女の視線はどこか遠くを見ているようで、まるで音楽の中に意識が溶け込んでいるような表情に仕上げました。薄暗い店内だからこそ際立つ、テーブルランプの小さな灯り。その光が頬や髪にやわらかく反射する様子を丁寧に描いています。
音のない絵に、音を描き込む
絵には本来、音は存在しません。それでも「ジャズが流れている」と感じてもらうために、いくつかの仕掛けを盛り込んでいます。ひとつは、彼女の姿勢。リズムに合わせてわずかに傾いた肩のライン、指先が軽くテーブルを叩いているような気配。もうひとつは背景のスピーカーとレコードで、視覚的に「音の出どころ」を示すことで、静止画でありながら空間に音が満ちているような錯覚を狙いました。薄暗さの中にあえて情報量を絞り込み、見る人の想像で音を補ってもらう——そんな引き算の演出です。
表と裏、ひとつの音楽空間
表面は音楽に浸る女性の上半身ポートレート、裏面はレコードプレーヤーで回るアナログレコードのクローズアップ。同じダークトーンの配色、同じ低い暖色照明で描くことで、側面を一周させたときにひとつの店内の情景としてつながる構成にしています。
このZippoライターをポケットから取り出すたびに、あの薄暗い店の片隅と、静かに流れる音楽を思い出せたら——そんな想いを込めました。
質感の作り込み
裏面のレコード盤は、回転する光沢と溝の細かな陰影を重ねて描いています。金属の上でこの艶感を再現するのは簡単ではなく、光の反射角度によって印象が大きく変わるため、実際にライターを傾けたときの見え方まで想定しながら調整しました。テーブルランプの灯りが革張りの椅子やグラスの縁ににじむ様子も、暗さの中に沈み込みすぎないよう明度のバランスを細かく詰めています。
落ち着いた色使い
ダークティール・バーガンディ・琥珀を基調に、彩度を抑えた大人向けの配色にまとめています。派手さよりも、静けさと余韻を大切にしました。三色を均等に使うのではなく、面積の大部分をダークティールで占め、バーガンディと琥珀を小さな差し色として効かせることで、画面全体が締まって見えるよう構成しています。
想定するシーン
一日の終わりに一人でふらりと立ち寄る店、あるいは友人とゆっくり語らう夜。会話の合間にふと静かになった瞬間、耳の奥に残る低い旋律——そんな時間を思い浮かべながら作ったデザインです。
こんな方におすすめ
- ジャズバーやレコードの雰囲気が好きな方
- 落ち着いたトーンのアニメ塗りイラストを探している方
- 音楽好きな方への贈り物にも
製作について
中西工房では、こうした一枚の情景を表と裏に分割し、ライター本体へ丁寧に落とし込んで仕上げています。単なるイラストのプリントではなく、開くたびにひとつの夜の物語を思い出せる、そんなライターづくりを心がけています。
暗いトーンのデザインは金属の地色に埋もれやすいため、印刷の下地から色の沈み方を確認しながら、何度も試し刷りを重ねて仕上げています。灯りの部分だけがふわりと浮かび上がるような明暗のコントラストは、この試作の積み重ねから生まれたものです。
慌ただしい毎日の中でも、このライターを取り出す瞬間だけは、あの薄暗い店の片隅で流れていた音楽を思い出していただけたら嬉しいです。
夜の相棒として長く付き合う
このZippoライターは、一度きりの飾り物ではなく、日々の中で繰り返し使ってもらうことを想定して仕上げています。金属の表面は使うほどに角の艶が増し、ダークトーンの配色との相性も少しずつ変化していきます。静かな夜に一本だけ手元にある——そんな安心感のある存在になればと考えています。











