デザインストーリー
波打ち際に映る空
濡れた砂浜は、時々本物の鏡になる。引いた波が薄い水膜を残していくその一瞬だけ、空の色も雲の形もそのまま足元に映り込む。このオリジナルZIPPOは、そんな「水鏡」の風景と、顔を上げた先に広がる本物の夏空、その二つを表裏に分けて描いたシリーズです。
表面:足元に映る、もうひとつの空
表側には、波打ち際を歩く少女の後ろ姿を描きました。主役はあくまで彼女の視線の先ではなく、彼女が今まさに踏みしめている濡れた砂浜です。そこに映り込む空と雲は、実物よりもわずかに輪郭を柔らかくぼかし、水面越しであることが一目で伝わるように描いています。少女の影を長めに落とすことで、日の高さと時間帯を感じさせる工夫もしています。
裏面:見上げた先の、本物の夏空
裏側は視点を大きく切り替え、少女が顔を上げた先にある本物の入道雲をクローズアップで描いています。表面が「反射」だったのに対し、裏面は「実物」。同じ配色・同じ画風・同じ光の当たり方を保ちながら、視点だけを足元から空へ一気に持ち上げることで、一本のライターの中で小さな視線移動のドラマが完結します。入道雲の輪郭はもくもくとした立体感を強調し、表面の水鏡に映っていた雲よりもくっきりと力強く描き込みました。
デザインの見どころ
反射と実物の対比
水面に映る空はどうしても揺らぎがあり、輪郭が甘くなります。その揺らぎを意図的に残すことで、裏面のシャープな本物の空とのコントラストが際立つように設計しました。表を見たときの静けさと、裏を見たときの開放感、この温度差がこのデザインの一番の狙いです。
少女の後ろ姿が生む物語性
顔を描かず後ろ姿だけにしたのは、見る人が自分自身をその足元に重ねられるようにするためです。誰のものでもない夏の記憶、誰もが持っている波打ち際の思い出に寄り添えるよう、あえて匿名性を残しています。
制作背景とこだわり
新海誠作品的な、逆光と絵画タッチの光表現から着想を得たシリーズの一本です。水たまりや波打ち際に空が映り込む描写は、この画風の中でも特に象徴的なモチーフで、今回はそれをZIPPO本体の縦長のスペースにどう落とし込むかを一番に考えました。表側では水平線を低めに設定して砂浜の面積を広く取り、裏側では逆に空の面積を画面いっぱいに広げることで、二枚を並べたときに「地」と「天」が対になるよう構成しています。
制作の過程では、波打ち際特有の反射のにじみ具合を何度も調整しました。にじみすぎると単なる水たまりに見えてしまい、逆にくっきりしすぎると鏡のような不自然さが出てしまいます。そのちょうど中間、風のない凪いだ瞬間だけに見られるあの透明感を目指して筆を重ねました。
こんなシーンに
夏の旅先、海辺のドライブ、あるいは日々の生活の中でふと夏を思い出したくなったとき。ポケットからこの一本を取り出すたびに、波打ち際の涼しさと見上げた空の広さ、両方の記憶がよみがえるような、そんな存在になればと考えています。海が好きな方、夏という季節そのものが好きな方への贈り物としても向いています。
質感へのこだわり
金属の側面に描く以上、色の発色は紙に印刷するイラストとは違う見え方をします。表面の水鏡パートは、金属特有の照り返しと相性がよくなるよう、青みを少し強めに調整しました。光の当たり方によって水面の揺らぎがより一層引き立つように狙っています。一方、裏面の入道雲は白の階調を厚めに重ね、立体感が金属の反射でつぶれてしまわないよう配慮しています。同じパレットを使いながらも、表裏で明度のバランスを微妙に変えているのはそのためです。
想定している使い方
デスクに置くときは、その日の気分で表と裏を選べます。落ち着いて過ごしたい日は静かな水鏡の面を、元気を出したい日は開放感のある入道雲の面を上にする、というような楽しみ方も想定しています。旅先のバッグやポケットに入れて持ち歩くうちに、少しずつ金属の質感が変化していくのも、実物のライターならではの味わいです。
こんな方におすすめ
海辺の景色が好きな方、夏という季節そのものに思い入れのある方はもちろん、旅先での何気ない一瞬を大切にしたい方にもおすすめです。Zippoライターは長く使い続けるほど手に馴染み、表面の質感も変わっていく道具です。だからこそ、今年だけでなく何年も先の夏の記憶と一緒に育っていくような、そんな一本を目指して制作しています。
仕上がりについて
側面のカーブに沿って、水平線と雲の位置が自然に見えるよう配置を調整しています。オリジナルジッポーとして一つひとつ丁寧に仕上げますので、金属特有の照り返しも味方につけて、水面のきらめきがより一層引き立つはずです。足元の反射と見上げる本物の空、その両方をポケットに忍ばせて、今年の夏を過ごしてもらえたら嬉しいです。











