日本神話シリーズ
天孫降臨 〜神々が、地上に降りた日〜
鎮まった地上を治めるため、アマテラスの孫ニニギが八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣の三種の神器と稲穂を携えて雲を割り、高千穂の峰に降り立ちます。道を阻む光の正体は国つ神サルタヒコ。日本の国のはじまりを告げる天孫降臨を約11分半の2Dアニメで描いた本作を解説します。
ショート版もあります
天孫降臨 〜神々、地上に降りる〜
- ・アマテラスが孫ニニギに三種の神器と稲穂を託す
- ・道を阻む光の正体は道案内役の国つ神サルタヒコ
- ・高千穂の峰に宮を建て、地上にはじめての田を拓く
- ・岩戸のウズメが地上はじめての祭りで再び舞う
あらすじ前半:孫に託された三つの宝と稲穂
天には高天原、その下には霧に煙る山と波立つ海が続く葦原中国が広がっています。岩は鳴動し、夜ごと得体の知れない声がこだまし、秩序を司る者はまだいません。幾柱もの神が遣わされ、武の神々の働きでようやく荒ぶる神々が鎮まると、天照大神は「いまこそわが血を引く者を降ろす時」と、若き孫ニニギノミコトを召します。「地上を委ねます。かの国を治めなさい」。授けられたのは三種の神器でした。岩戸で女神を誘い出した八咫鏡、絶えぬ命と栄えのしるしである八尺瓊勾玉、スサノオが大蛇の尾から得た草薙剣。「この鏡をわたしと思い祀りなさい」。あわせて高天原の稲穂が渡され、岩戸の前で舞ったアメノウズメも供の列に加わります。
あらすじ中盤:雲を割って降りる一行と、道を阻む光
一行は天と地をつなぐ天の浮橋を渡り、八重にたなびく雲を押し分けて降りていきます。厚い雲がふたつに割れ、裂け目から地上の光が差し込み、山と川が近づいてくる。そのとき行く手に、天をも地をも照らす巨大な光の塊が立ちふさがりました。供の神々はまぶしさに誰も前へ出られません。ニニギは度胸のあるウズメに名を問わせます。「天つ神の御子がいま降ります。そこなる神よ、御名をお聞かせを」。光が和らいで現れたのは、長い鼻に爛々と輝く目を持つ、見上げるほど大きな国つ神サルタヒコでした。「阻むのではない。道案内に迎えに上がったのだ」。この身の光は生まれつきで、道を照らすには好都合だと笑うサルタヒコを先頭に、一行はふたたび地上を目指します。
あらすじ後半:高千穂の峰と、はじめての祭り
雲を抜けた先、霧の中からひときわ高い峰が現れます。日向の国、高千穂の峰。ニニギはそのいただきに足を踏みおろし、「朝日のまっすぐ射す国、夕日の照り映える国。まことに良き地だ」と、ここを始まりの地と定めました。役目を終えて伊勢の五十鈴川へ帰るというサルタヒコには、ウズメを送り役につけます。のちに二人は結ばれたと語り伝えられます。峰には柱が立ち、千木が空にそびえる宮が築かれ、奥には八咫鏡が祀られました。天の稲穂はふもとの野におろされ、水が引かれ、地上にはじめての田がひらかれます。宮の竈の火は家々に分けられ、噂を聞いた人々が集まって里ができ、秋には黄金の稲穂が実りました。人々は火を焚いて歌い舞い、ウズメが岩戸の夜のように舞う、地上はじめての祭りの夜が訪れます。
登場する神々
・ニニギノミコト: 天照大神の孫。三種の神器と稲穂を携えて高千穂に降り、地上を治める ・天照大神(あまてらすおおみかみ): 太陽の女神。孫に地上を委ね、鏡を自分と思って祀るよう伝える ・アメノウズメ: 岩戸の前で舞った芸能の女神。供として降り、臆せずサルタヒコに名を問う ・サルタヒコ: 長い鼻と輝く目を持つ巨大な国つ神。道を阻む光と誤解されるが、実は道案内役 ・供の神々: ニニギに付き従って降り、はじめて地上の風を受ける ・荒ぶる神々: 降臨前の地上を跋扈していた存在。武の神々の働きで鎮められる
見どころ:剣でも王冠でもなく、稲穂
本作は日本神話を2Dアニメで描くシリーズの長編です。天孫降臨というと征服の物語のように聞こえますが、本作でニニギが最初に地上へおろすのは稲穂であり、最初にすることは田を拓き、竈の火を家々に分けることです。「天つ神の心と、国つ神の力。ふたつが結ばれてはじめて国は栄える」というナレーションが示すとおり、道を阻んだサルタヒコが結末で火を囲んで笑っている場面に、この動画の視点があります。もうひとつの見どころは、岩戸編との呼応です。岩戸の前で神々を笑わせたウズメが、今度は光の前に一人で進み出て、祭りの夜に「地上でも神さまを笑わせましょう」と舞う。同じ女神が天と地の二つの夜を結びます。
神話の背景:高千穂と三種の神器のゆくえ
ニニギが降り立った高千穂は、宮崎県高千穂町と、宮崎・鹿児島県境の霧島連山にある高千穂峰の二つの伝承地が知られています。高千穂町には天岩戸神社や高千穂神社があり、霧島神宮はニニギを祭神とします。サルタヒコが帰った伊勢の五十鈴川のほとりには、伊勢神宮の内宮とともに猿田彦神社があります。天照大神が「わたしと思って祀りなさい」と託した八咫鏡は、のちに伊勢神宮に祀られると伝わり、草薙剣は熱田神宮に祀られると伝わります。動画の中で「朝日のまっすぐ射す国、夕日の照り映える国」と語られる言葉は、古事記に記されたニニギの言葉に基づくものです。ニニギの血筋はやがてこの国の歩みへつながると動画は結びます。
シリーズの前後
本作の直前は「国譲り 〜地上を、天つ神へ〜」編です。武の神タケミカヅチが大国主に国を譲らせ、壮大な宮を条件に地上が天つ神へ渡るまでが描かれ、本作冒頭で「武の神々の働きで鎮められた」と語られる地上の状態にあたります。続きは「木花咲耶姫 〜炎の産屋〜」編。高千穂に降りたニニギが山の神の娘コノハナサクヤヒメと結ばれ、炎の産屋で子が生まれる物語です。三種の神器の由来は「天岩戸の大宴会」編と「八岐大蛇 〜出雲の灯〜」編に、ウズメの舞の初登場は「天岩戸の大宴会」編にあります。
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