デザインストーリー
誰かの「帰り道」を、そっと描く
特別な事件は何も起きていない。ただ、雨に濡れた駅前をひとり歩いて帰る、それだけの夜。けれど、そういう何気ない情景ほど、なぜか強く記憶に残っていたりします。看板の光がアスファルトに滲み、傘の中だけがぽつんと静かで——そんな一瞬を、ZIPPOライターの表面に描きました。
なぜ「静かな情景」を選んだのか
派手なモチーフが並ぶカタログの中で、あえて感情を大きく主張しない一枚を用意したいと考えました。誰かにとっての「特別な夜」ではなく、「なんでもない夜」だからこそ誰の記憶にも重なりやすい。オレンジとブルーという対照的な光の色を使いながらも、全体としては落ち着いたトーンにまとめ、眺めるたびに違う記憶を思い出せるような余白を残しています。
傘の中の人物はあえてシルエットのまま、表情も年齢も性別も特定しない描き方にしました。見る人自身の「帰り道」を投影できるように、という意図です。駅前の小さな明かりと、遠くに霞むネオン看板、その距離感が生む静けさも大切にしています。
職人の手仕事で、一つの物語に
雨の反射やネオンの滲みは、輪郭をはっきり描きすぎると途端に嘘っぽくなってしまう、繊細な表現領域です。中西工房では、オリジナルZIPPOライターとして製作する際、光の滲みの柔らかさと輪郭線のメリハリのバランスを何度も確認しながら仕上げています。小さな面積だからこそ、情感を損なわない調整が重要になります。
裏面のデザインについて
裏面は雨粒、傘のシルエット、ネオン看板の断片を連続パターンとして散りばめました。表の「一場面」を、裏の「降り続く雨」が静かに包み込むような構成です。
長く使える相棒であるということ
雨の夜の帰り道というのは、誰の人生にも繰り返し訪れる情景です。特別な一度きりの記念というより、これから先も何度も重なっていく日常の一コマ。だからこそ、一度きりの記念品ではなく、長く使い続けられる道具にこのデザインを宿したいと考えました。ZIPPOはオイルを補充しフリントを替えながら何十年も使える構造を持っています。雨の匂いを思い出させる一本を、日々のポケットの中で育ててみてください。
こんな方に、こんなシーンに
- 物語性やイラストの世界観を大切にしたい方に
- 落ち着いた大人のデザインを探している方に
- 節目の贈り物や、自分へのご褒美として
雨の匂いがする夜を、そっとポケットに忍ばせて。











