デザインストーリー
生と死、ひとつの花が結ぶふたつの物語
古典絵画に伝わる「ヴァニタス」——静物を通じて生と死の儚さを描く様式に着想を得て制作したのが、このメメント・モリのデザインです。表面には髑髏の隙間から薔薇が咲き誇る対比の構図を、裏面にはその同じ薔薇だけが満開に咲く姿を描きました。
メメント・モリという言葉
「死を忘れるな」という意味を持つラテン語のこの言葉は、単に死を恐れるためのものではなく、限りある命だからこそ今を大切に生きようという教えでもあります。オリジナルZIPPOライター製作でこの言葉をモチーフに選んだのは、火を灯すという行為そのものが、生きている実感と深く結びついているからです。中世ヨーロッパの静物画家たちが繰り返し描いてきたこのテーマを、現代の道具に落とし込んでみたいという思いから生まれた一本でもあります。
表面に込めた対比
髑髏という死の象徴に、生命力あふれる薔薇が根を張り、花を咲かせる——相反するふたつの要素をひとつの構図に共存させることで、死の中にも生が宿るという逆説を表現しました。荘厳な明暗のコントラストが、その緊張感をより際立たせています。骨という無機質な質感と、花びらの柔らかさを対比させることで、視覚的にも強いメッセージ性を持たせました。
裏面で完結する、生だけの世界
表面が死と生の共存を描くのに対し、裏面には髑髏を排し、同じ薔薇だけが満開に咲く姿を描きました。表で提示された緊張が、裏でひとつの答えとして解放される——そんな二段階のストーリーを狙っています。死を経てなお咲き続ける花という構図は、悲しみの先にある再生への希望を象徴してもいます。
同じ光、同じ色で結ぶ
表裏で画風や配色がずれてしまうと、対比としての説得力が失われてしまいます。深いバーガンディと古びた金色、劇的な明暗のライティングを共通言語として、ふたつの場面が同じ世界の中にあることを示しました。光の当たる角度、影の落ち方まで細部にわたって統一することで、表裏が別物ではなく、ひとつの連続した物語であることが伝わるよう心がけています。
ヴァニタス絵画という伝統
17世紀オランダの静物画に多く見られたヴァニタス様式は、豪華な果物や宝飾品と並んで髑髏や燃え尽きかけた蝋燭を描くことで、富や美しさの儚さを表現してきました。本作もその伝統に連なりながら、花という生命力の象徴を組み合わせることで、単なる警句を超えた物語性を持たせています。
死生観を静かに問う一本
重いテーマではありますが、このデザインが伝えたいのは悲観ではなく、今この瞬間への慈しみです。節目の年齢を迎える方、大切な人を見送った経験のある方にこそ、静かに寄り添える一本だと考えています。
表裏をめくる楽しみ
蓋を開ける表側では対比の緊張感を、ライター本体を裏返すと満開の生命力を——ひとつの物語が二段階で展開する構成は、他にはない鑑賞体験を生み出します。オリジナルジッポー製作ならではの、両面が主役のデザインです。
手にするたびに思い出すこと
限りある時間の中で、何を大切にするか。派手な演出ではなく、古典絵画のような静けさの中に、そんな問いをそっと忍ばせました。日々の中で、ふと立ち止まる瞬間の相棒として。
骨と花、質感の対話
硬く乾いた質感の骨と、みずみずしく柔らかい花びら。ふたつの異なる質感を隣り合わせに描くことで、視覚的な緊張感だけでなく、触感的な対比までも感じさせる一枚を目指しました。細部の描き込みにこだわったのも、この質感の違いを丁寧に表現するためです。
花言葉という補助線
表裏に描いた薔薇には、情熱や愛情、そして時に別れといった多層的な花言葉が込められています。単に美しい花を選んだのではなく、生と死というテーマに寄り添う花言葉を持つ薔薇だからこそ、この構図の主役として選びました。
静物画がもたらす内省の時間
動きのない静物を見つめる時間は、忙しさの中で失われがちな内省の機会を取り戻してくれます。この一本を眺める数秒間が、自分自身の生き方を静かに振り返るきっかけになれば嬉しく思います。
対比が生む余韻
強いテーマ性を持つデザインだからこそ、あえて説明的にしすぎず、見る人の解釈に委ねる余白を残しました。表と裏、どちらを先に見るかによっても、感じ方が変わってくるはずです。











