デザインストーリー
言葉と紋様、二つの願いを重ねる
家紋には、家の存続や繁栄を願う気持ちが込められています。中でも木瓜紋は、鳥の巣を由来とし「子孫繁栄」の願いを託された紋様です。今回のデザインでは、この木瓜紋が持つ「家族」というテーマを、「絆」という一字に重ね合わせました。紋様だけでは伝わりにくい想いを、言葉の力を借りてまっすぐに届けたいと考えたシリーズです。
「絆」という漢字に隠された、もともとの意味
「絆」という字は、本来は牛馬をつなぎとめる綱を意味していました。動くものを引き止め、離れないようにする綱——そこから転じて、人と人との断ちがたいつながりを表す言葉として使われるようになったのです。もとは実用の道具を指す字が、時代を経て情緒的な言葉へと意味を広げていく過程は、鷹の羽が実用品から精神の象徴になっていったのと同じ道筋をたどっています。文字も紋様も、暮らしの中の道具から生まれ、やがて心を表す記号へと育っていく——そんな共通点に気づかされます。
一字を支える、四隅の小さな紋
「絆」の文字を大きく主役に据えつつ、四隅にはごく小さく木瓜紋を配しています。これは単なる装飾ではなく、「家族」「つながり」というテーマを、文字だけでなく紋様の側からも静かに支える役割を担っています。中心に大きく構える文字と、隅で控えめに寄り添う紋様——この主従関係を丁寧に設計することで、賑やかになりすぎず、それでいて意味の重層性を持ったデザインに仕上がりました。温かみのある生成り色の背景も、堅苦しい紋章というより、家族の温もりを意識した選択です。四隅という配置も偶然ではなく、家族それぞれが少し離れた場所に立ちながらも、中心の絆によって支え合っている様子を意識しています。
裏面の結び目文様が語る、目に見えないつながり
裏面には木瓜紋に加えて、小さな結び目(むすび)の文様を組み合わせて配置しています。水引や組紐に代表される結び目は、日本では古くから「二つのものを一つに結ぶ」象徴として、贈答品や祝いの席で用いられてきました。木瓜紋が「家」という単位のつながりを表すのに対し、結び目文様は「人と人」の一対一のつながりを表しており、二つの文様を重ねることで、家族という大きな単位から、個々の関係性という小さな単位まで、重層的な「絆」を裏面に描き込んでいます。
木瓜紋と「絆」、二つのモチーフを選んだ理由
家紋の中には家族や繁栄を象徴するものが他にもありますが、木瓜紋を選んだのは、その丸みを帯びた優しい輪郭が「絆」という言葉の柔らかさと最も自然に響き合うと感じたからです。桐紋や桔梗紋のような硬質な紋様では、この文字が持つ温かさと少しずれてしまいます。文字と紋様、それぞれの持つ質感を合わせる——このシリーズ全体を通して大切にしている視点です。
つながりを、贈る一本に
この「絆」文字デザインを、Zippoの真鍮ボディへ彫刻・印刷で再現しました。裏面には木瓜紋と結び目の文様を組み合わせた連続パターンを配置し、表の一字を支える構成にしています。
結婚祝い、出産祝い、還暦や退職など、家族の節目に贈る一本として。あるいは、離れて暮らす家族へ「変わらぬつながり」を伝える手段として。紋様と文字、二つの伝統的な表現を重ねることで、言葉だけでは少し照れくさい想いも、静かに手渡せるデザインになったのではと思います。手紙を書くのは照れくさくても、一本のライターに想いを託すことならできる——そんな贈り方があってもいいのではと思います。











