日本神話シリーズ
八岐大蛇 〜出雲の灯〜
高天原を追放されたスサノオは、出雲で八つの頭を持つ大蛇ヤマタノオロチと対峙します。娘を喰われると嘆く老夫婦のために八つの酒樽を用意し、酔い眠った大蛇を斬る。尾から草薙剣が現れる古事記の大蛇退治を約8分のアニメで描いた本作を、あらすじから神社まで解説します。
ショート版もあります
八岐大蛇 〜暴れ神、英雄になる〜
- ・八塩折の酒と八つの桶で大蛇を酔わせて眠らせる作戦
- ・尾から現れた草薙剣を姉アマテラスへ献上する
- ・孤独な暴れ神が娘を守る英雄に変わる心の動き
- ・日本最初の和歌「八雲立つ」の誕生まで描く
あらすじ前半:出雲で出会った泣く老夫婦
天岩戸の騒ぎから幾日か過ぎたころ、数々の乱暴の罪を負ったスサノオは高天原を追われ、ひとり天を降ります。降り立ったのは出雲の国、肥の河の上流にある鳥髪の地。川を流れてきた一膳の箸を見て上流に人がいると気づき、川をさかのぼると、一軒の家で老夫婦が若い娘を抱いて泣いていました。国つ神アシナヅチとテナヅチ、そして末娘のクシナダヒメです。八人いた娘はヤマタノオロチに毎年ひとりずつ喰われ、残るはこの娘ひとり。しかも今夜がその大蛇の来る夜だと言います。動画では、追放されたスサノオが「母上に会いたかっただけなのに」と胸の内を語る場面も描かれます。
あらすじ後半:八つの酒樽と、尾から出た剣
スサノオは娘を妻にもらい受ける約束と引き換えに、大蛇退治を引き受けます。クシナダヒメを神通力で櫛に変えて髪に挿し、老夫婦には何度も醸した強い酒、八塩折(やしおおり)の酒を造らせました。家の周りに垣を巡らせ、八つの門ごとに酒を満たした桶を据えて待ち構えます。真夜中、山をまたぐ巨体と赤く爛れた十六の眼が現れますが、八つの頭は酒の香りに誘われて桶に突っ込み、飲み干して深い眠りに落ちました。スサノオは十拳剣(とつかのつるぎ)で首を次々に斬り落とし、目覚めた残りの首との死闘の末に大蛇を倒します。尾を斬ったとき刃が欠け、中から光る太刀が現れました。のちに草薙剣と呼ばれる神宝です。
登場する神々
・スサノオ(すさのお): アマテラスの弟。乱暴の罪で高天原を追われ、出雲に降りる。本作で暴れ神から英雄へ変わる ・クシナダヒメ: アシナヅチ・テナヅチの末娘。大蛇に狙われ、スサノオの妻となる ・アシナヅチ・テナヅチ: 出雲の国つ神の老夫婦。娘を七人喰われ、八塩折の酒を醸して退治に協力する ・ヤマタノオロチ: 八つの頭と八つの尾を持つ大蛇。背には苔と檜が茂り、体は八つの谷と峰にまたがる ・アマテラス(あまてらす): 姉。献上された剣を受け取り、遠くから弟の成長に微笑む
見どころ:暴れ神が「守る者」になる瞬間
本作の軸は大蛇退治そのものより、スサノオの変化にあります。冒頭では「暴れることでしか胸の穴を埋められなかった」と語る孤独な神が、泣く娘を見て「気に入らんな」と立ち上がり、最後には「この灯ひとつ、おれの手で守る」と誓う。2Dアニメならではの表情の変化で、その心の動きを追えます。戦いの場面も一方的ではありません。首を斬られて目覚めた大蛇が牙をむき、スサノオを丸呑みにしようと迫る一進一退の攻防が描かれます。尾から現れた剣を自分のものとせず姉へ捧げる判断が、姉弟のわだかまりを解いていく流れも見逃せません。
神話の背景:須我神社と日本最初の和歌
大蛇を退治したスサノオとクシナダヒメは、新しい住まいを求めて出雲を歩き、須賀の地で「すがすがしい」と心が晴れたことからこの地名がついたと古事記は語ります。そこで詠まれた「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」は日本最初の和歌と伝わり、動画の終盤でも紹介されます。島根県雲南市の須我神社は、この宮の跡に建つ日本初之宮として知られています。尾から出た草薙剣は、のちに天孫降臨編で三種の神器のひとつとしてニニギに授けられ、現在は愛知県の熱田神宮に祀られると伝わります。ヤマタノオロチは氾濫を繰り返す斐伊川の姿だとする解釈もあります。
シリーズの前後
本作の直前は「天岩戸の大宴会 〜世界が消えた日〜」編です。スサノオの乱暴でアマテラスが岩戸に隠れ、宴のあとに弟が高天原を去るまでが描かれ、本作の冒頭に直接つながります。続きは「因幡の白兎」編。スサノオの子孫にあたる大国主が、皮を剥がれた兎を救う物語です。さらに「大国主の試練 〜根の国の恋〜」編では、根の国を治める祖神として年老いたスサノオが再登場し、娘スセリビメの夫となる大国主に試練を課します。出雲を舞台にした一連の物語として続けて見ると、人物の関係がつながります。
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